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長き歴史あるこの会社を2017年に引き継いだのは、4代目の代表取締役社長となる峯岸宏典だ。
何を隠そう、創業日は峯岸の祖父である吉雄の生誕日。農家だった吉雄の父が山林の買い付けを行い、事業の土台を築き上げたことへの感謝の想いを込め、会社の「起点」としたのである。
驚くことに、会社では100周年を迎える1年前にはすでに”次の100年”に向けてある動きが進行していた。「100年ビジョン委員会」を立ち上げ、今後どこに向かって進んでいくのか、全社員で共有する取り組みを始めたのである。その後も毎月1回以上、約2時間半にわたる会議は常時開催され、計25回(2019年1月10日 - 社内報第1号発行当時)を数える。「まず初めに、社名の『フォレスティ峯岸』と、事業定義である『森のように人にやさしく』について、今一度深く掘り下げるところから始めようとの話になりました。結果、何を大切にし、誰のためのビジネスを行っていくか明確にできたのです」。かつては、材木や建材を販売していればそれで事業は成り立っていた。だが、委員会の回を重ねるうち、「本当にそれを主軸として良いのだろうか」との疑問が浮上する。むしろ、本来の仕事は材木を通して、お客様である工務店を豊かにすることではないのか。「森は外から見れば雄大で、自然の優しさや包容力を感じることができる。ですが、一歩中に入れば危険を内包した厳しい世界でもあるのです。目指すべき姿は、そうした二面性を併せ持った企業ではないのか、と結論づけました」。自身が全面に出て目立つのではなく、あくまでもお客様の課題を解決して支える存在となる。社員たちはプロフェッショナルの厳しさをしっかりと理解し、仕事に臨んでいく。
「森のように人にやさしい」。これがまさにあるべき姿であった。
委員会で定めたものは、他にもある。100年後を見据える姿として、会社を「仙台発のビジョナリーカンパニー」に押し上げることを目標としたのだ。
「ボーイング社やアップル社のような世界の名立たる企業と同様に、”グッド”な企業ではなく、”グレート”な企業を目指そうということになりました」。今すぐには、難しいかもしれない。しかし、自分たちの次の世代、そのまた次の世代とこの目標を受け継いでいけば、成功できないとは言い切れないはず。その価値を汲み取り、高みを目指してくれるかどうかは、現在の会社にかかっているといえよう。
これらの目標が単なる絵空事ではないのを証明するかの如く、峯岸は「ビジョナリーカンパニー」実現への第一歩として、ある大胆な策を打ち出す。「AI材木屋によるMBA経営」である。
現在の材木業界を取り巻く環境は、いまだアナログな部分が多い。受発注のほとんどが、電話による口頭注文、もしくはファクシミリに頼っている。少しずつメールによる注文も増えてきてはいるものの、その数はまだ少数派といえる。
同じくサービスの一環として行っている積算業務も、営業担当数名が日々のルート営業を終え帰社した後、数時間かけて作成しているのが現状だ。峯岸は、この状況を変えるべく決意を固める。
「まずは全てをデジタル化し、システム化できる部分はどんどん進めていきたい。そして、最終的にはAIを導入し、見積もり作成などの部分は学習させて効率化を図りたいと思っています」。
実現すれば、たとえば今まで見積もり1件に2時間かかっていたものが、AIなら1分で可能かもしれない。1時間で1万件もの作成も、決して夢ではないのだ。それは、お客様にとって、納期を大幅に短縮ができるという大きなメリットにつながるだろう。さらに、負担が減って隙間時間が生まれた社員たちをビジネススクールに通わせ、MBAの学位を取得させたいと、峯岸の構想は発展し続けている。
「経営の方法を学んだ営業担当が、お客様のバックアップを担当します。その体制を整えてこそ、本来やるべき仕事のスタートラインに立てるのではないかと考えました」。そのための手段が、「AI材木屋によるMBA経営」なのだ。会社全体が、壮大な夢に向けて歩みを進め始める。だが峯岸が見据えるのは、さらに壮大なテーマだった。
AIを駆使した効率的な業務により生み出されたゆとりを最大限に利用し、お客様支援に全力をかける。そんなフォレスティ峯岸の100年後の姿を実現すべく、様々な取り組みを始めた社長、峯岸宏典。どのような未来予想図を描いているのだろうか。
峯岸が大胆なミッションを打ち出した際、社員は最初から諸手を挙げて賛成した訳ではなかった。「今まで目前の仕事をこなせば良かったのに、『100年先を考えろ』と言われてもね。でも、売り上げが前年比106パーセントくらい上がりました。彼らも、やるべきことを色々と自覚し始めて、楽しみながらやってくれているんじゃないですかね(笑)」ゴールは100年後ではなく、自分たちにしかできないビジョンに向かって歩いている、そのことに価値があるのだという。意識することにより動きが変化する、その時点で半分は成功している。峯岸の意向に対して、社員も志を一つにしたといえよう。
いずれビジョナリーカンパニーへと会社を押し上げるべく奮闘する中で、峯岸は「お客様の役に立てるかどうかが、一番の評価基準である」と語る。
現場において、どれだけお客様に喜んでもらえるかが全てだが、最も肝心と言えるアウトプットの出口部分については、峯岸はノータッチである。しかし、それには理由があった。「うちの会社の強さは、何と言ってもチームワークの良さですから」。
商品差別化がしにくい材木業界にあって、「人」が強いというのは他社と差別化できる大きな要素といえる。通常より納期を短く設定できるのも、社員同士細かくカバーし合っているからに他ならない。仮に誰かが配送に行けなくなっても、別の社員がすぐ対応する。互いに助け合う関係が、自然と醸成されているのだ。
また、各自で細かい気配りがなされている。納材の際にも、クロスが貼ってある完成間近の物件なのか、枠組みしかできていない段階の現場なのか。さらには、晴れた日に行くのか、それとも雨か曇りなのか。状況に合わせて、納材方法や意識すべきことを逐一変えている。
「単に材木を運んでいるのではなく、会社の看板を運んでいると意識してくれています」。
社長就任当初、社員たちがこうした高い意識を持つこと自体、会社の強みだと感じた。だからこそ、己が現場での振る舞いについて、細かな指導を行う必要は一切ないと胸を張る。会社は進化の途上にあるが、今後も発掘し切れていない会社の強みを見つけていければ、と思っている。
大胆な改革を進める理由は、会社の発展のためだけではない。縮小傾向にある材木業界、ひいては宮城県の材木市場を守るという大きなテーマがそこにはあった。
「積算業務に追われているのは、うちに限った話ではない。県内の同業者が導入しやすい金額でシステムを開発して広めれば、AIを使った業務を行える業者が増えるはずです」。
実現すれば、様々なメリットが生まれるだろう。たとえば、県内の材木業者がネットワークで結ばれ、注文に対し複数の業者が連携し合える。また、現場により近い業者から材木を届けられることで、輸送コストの削減や、納期の短縮が可能となる。
さらには、そうした強固なネットワークの構築により、他地域の業者が宮城県の材木市場に新規参入するのを阻む効果も期待できよう。業界全体の底上げができれば、長く存続するための基盤を整えることにもつながっていくはずだ。
会社単体だけでなく、業界の未来さえも視野に入れた経営を行う峯岸は、自身はどんな将来を目指すのか。
「経営とは、目的達成のための手段にすぎません。真のリーダーシップとは、経営を通じて、新たなリーダーを生み出すことなのです。私の目標は、『日本のドラッガー』と言われるような人間になること。世界中にリーダーシップの種をまいていきたい」。
創業者から、脈々と受け継がれてきたDNA。心血を注ぎ、事業の基盤を整えてきたからこそ、今がある。「過去に学び、今を高め、次へつなぐ。私がやるべきはこの3つのみです。いかにして次世代につないでいくか。4代目としてのバトンリレーを、きちんと成功させるのが重要だと思っています」。
遠くない将来、「こんなすごい会社があるなんて」と驚かれる、そんな“グレート”な企業を目指して挑戦し続ける峯岸と、フォレスティ峯岸から目が離せない。
代表取締役社長
Hironori Minegishi
1917年(大正6年)2月20日創業の
株式会社フォレスティ峯岸。
長き歴史のあるこの会社を2017年に引き継いだ、
4代目の代表取締役社長 峯岸宏典。